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がま磯 マスターモデル2遂に発売!開発担当者に訊く開発秘話

2017年10月28日(土)

がま磯 マスターモデル2口太/尾長 機能説明

2017年10月、10年の時を経て遂にフルモデルチェンジし発売されたがま磯 マスターモデルII 口太/尾長。

今回は、メーカー開催の実釣会に参加する機会を設けて頂き、さらにロッドの開発担当者から直接がま磯ロッドのコンセプト、そして「がま磯 マスターモデルII 口太/尾長」の開発秘話をお伺いすることができましたので、ご紹介させて頂きます!

開発担当者(以下、開) :この度は、実釣会にお集まりいただきありがとうございます。
今回発売となりましたがま磯 マスターモデルII 口太、そして尾長のお話をさせて頂くにあたり、本モデルは初代マスターモデルや、アテンダー2からの系譜を強く受け継いだモデルとなっていますので、少しだけおさらいから始めさせて頂きます。

まず、アテンダー2は以前よりがま磯のコンセプトとなっていたアクティブサスデザインをさらに改良した『スーパーアクティブサスデザイン』を採用し、竿の継目部分の内部構造を改良、精密なブランクスの設計を行いました。

がま磯 マスターモデル2口太/尾長 スーパーアクティブサスデザイン

磯竿は魚を掛けてからのスムーズな支点移動が重要で、アテンダー2やマスターモデル2のような胴調子の竿ではなおさらです。
理想はワンピースロッドの応力伝達のスムーズさなんですが、磯竿のような振出竿では、継目の部分で力の伝達が阻害されてしまいます。
『スーパーアクティブサスデザイン』は竿の継目部分の内部を竿尻にいくほど薄く削るため柔らかくなり、次の番手の曲がりに沿って曲がり込む。
そうすることで、突き上げによるロッドの破損を防いでくれるようになり、さらには継目の段差を50%以上が削減が実現。
さらに、振出竿の持つポテンシャルを限界近くまで引き出し、継番ごとにかかっていたパワーロスを抑制、驚くべき応力伝達によって、今までにない粘りを実現することができました。

ちなみに、嵌合部分はテーパー状に立ち上げていくんですが、『スーパーアクティブサスデザイン』を採用したロッドは竿尻の部分のカーボンの厚さを薄く抑えて調整しています。

その分、技術的な精度を要求されるんですが、なんとか継目の段差を50%以上削減することに成功。
振出竿の持つポテンシャルを限界近くまで引き出すことにより、継番ごとにかかっていたパワーロスが抑制され、粘りのある応力伝達のスムーズな竿ができるようになったというわけです。

がま磯 マスターモデル2口太/尾長 トレカ・ナノアロイ T1100G

また、今回発売されましたマスターモデル2は、スーパーアクティブサスデザインのコンセプトを引き継ぎつつも、東レさんのカーボン素材『T1100G』に加え、グレ競技SP3やインテッサG5にも搭載されているPCS(パワークロスシステム)を採用したんですが、グレ競技SP3には#2と#3にしか搭載していないんですが、マスターモデル2には#2~#4まで入れています。
太陽にかざして頂けるとよくわかると思うんですが、縦に対して丁度左右45°ずつで配列しています。
横にもカーボン繊維の入った4軸のカーボンなんかも汎用品としてあるんですが、それを基に弊社は横軸のカーボンを抜いてもらうよう、特注でオーダーしました。

― :それはなぜですか?

開 :そうですね、理由のひとつとしては、やはり重くなってしまうということ。
斜めに入ったカーボンはそれだけで潰れやねじれに対して耐久性を持たせるために強くつくられているため、横に入ったカーボン材は不要なんです。
ルアーロッドには6軸であったり8軸といったカーボンを使った竿があるんですが、5m以上あるフカセの竿ともなると重たく、張りのない竿になってしまいます。

がま磯 マスターモデル2口太/尾長 パワークロスカーボン

G5にもこのスーパーアクティブサスデザインとPCS、いずれも採用していたんですが、今回のマスターモデル2は、松田さんの要望もあって、さらに細くつくっていますので、さらに粘り、そしてねじれに強くなるんです。
雑誌などに掲載されていた松田さんのコメント「初代のマスターモデルは50%、アテンダー2は70%、今回のマスターモデルで100%」というのはここにあるのかなと思います。
まず、マスターモデル2の松田さんとアテンダー2のテストをしている時に「細くて強い竿をつくってくれ」という強い要望がありました。
そこでどんどん細く設計を加えていったんですが、途中から「竿がSの字になる」とおっしゃるようになって。

がま磯 マスターモデル2口太/尾長 湾曲イメージ

― :大きい魚とのやり取りの最中ですか?

開 :そうです。
大きくて力の強い魚を掛けたことのある方だったらお分かりいただける方もいらっしゃると思うんですが、魚を掛けて竿をぐっと溜めていくと、次第に竿がSの字にしなって、そこからのされたようなかたちになってしまい、竿が起きてこなくなるんです。
素材がどんなに強くても竿を細くしすぎると、どうしてもパワーが損なわれてしまうので、これ以上竿を細くするとできないなということで、その時アテンダー2の開発が終わりました。

しかし、今回東レさんの新しい規格のカーボン『T1100G』を採用することができることとなったんですが・・・。
表を見て頂けるとわかるかと思うんですが、薄い灰色の背景のグラフが既存のカーボンの範囲となります。
縦軸が引張強度に関わるグラフで、横軸が弾性・・・竿の硬さを表した座標になります。
竿の強さと硬さはまったく違う意味をあらわすんですが、竿が硬くなればなるほど、強さの縦軸は下がってしまうんです。
逆にカーボンの限界を超えて、無理をした柔らかさを求めてしまっても逆に強さも下がってしまう。

『T1100G』はこれまでの既存のカーボンとはまったく別の次元に位置しているということがお分かりいただけるかと思います。
よく、鮎竿で60tカーボンだったり、ゴルフのクラブで80tカーボンという言葉を耳にするとは思うんですが、磯竿で60tカーボンを使うと「叩き」の問題が出てきてしまったり、逆に柔らかすぎる竿を使うと持ち重りだけしてしまうため、厚く設計しないとだめなんです。
磯竿に関しては、張りと強さのバランスが丁度中間でないと磯竿に使うカーボンには適していないんですが、たまたまこの中間に位置するカーボンでバランスがよく、なおかつ強いカーボン素材が出たんです・・・それが『T1100G』

昨年発売されたファルシオンで初めて製品として採用したんですが、これがイメージしていた以上にいい出来で。
弊社としても今後、これを積極的に採用していこうという運びとなりました。

補足することによって実現した掛かると曲がる竿なんですが、振ってみても全然そんな感じがしないんですね。
持っても自重に比べて軽く感じて持ち重りをしない・・・これは素材の進化によることが大きいかと思います。

― :以前のマスターモデルと比較して、どのくらい細くなっているんですか?

開 :そうですね、竿の世界だと0.3mm径が細くなればものすごく調子が変わってくるんですが、先径・・・穂先は変わっていないんですが、 #2以降は1mm以上の世界で変わっています。
竿の硬さは径の約4乗に比例していくんですが、1mmと2mmの径だと単純に2倍だから、硬さも2倍だろうとい考えてしまいがちですが、径が2倍になると。硬さは10数倍にもなります。
カーボンはt数は2倍になれば硬さも2倍に変わるんですが、高弾性カーボンを使えばものすごく硬くなるのかと言えばそうではなくて、硬いカーボンを使って硬くするくらいだったら径を2倍にすればいい・・・という考え方もできます。
ただ、竿はテーパーの形状によって硬さが変わってくるので、設計次第でいくらでも調子はつくれるという考え方のため、敢えて高弾性カーボンは謳わないようにしています。

がま磯 マスターモデル2口太/尾長 金赤塗装

あとは、、、、そうですね。
皆さんご存知で弊社製品ではお馴染みの金線なんですが、よく中国製の竿で弊社製品の類似なんかでも似た意匠が使われているかと思うんですが、よく見るとかたちが歪だったり線の最初と最後がつながってなかったりするんですね。
これ自体も専門の職人さんがいらっしゃって、その方が1本1本塗装されているんです。

竿の径というのは実はわずかに楕円なんですが、楕円の形状のものをろくろを回すように塗装するのは本当はとても困難で技術を要するんですが、竿の僅かな加減で調整していらっしゃるんですね。
この作業、私も何度か体験させていただいたことがあるんですが、まずうまくいきません。

― :一度も?

がま磯 マスターモデル2口太/尾長 ロゴシール

開 :はい、一度も(笑
ちなみに、このマスターモデルのロゴは実はシールを貼っているんですがその作業、そしてコーティングすべて手作業なんです。
簡単に言うと、皆さんスマートフォンに保護シートを貼られたことありますよね?

― :はい。って、このロゴってシールなんですか!?

開 :そう、シールなんなんです。
作業としてはあれと同じなんですが、竿なので曲がっていますから貼るのも多少技術が要る上に、今回はそれに加えて面積も大きいのでかなり難しいんですが、この鮮やかさだったり美しさというのは、塗装ではなかなか出せないで。

― :へぇ~・・・それにしても、全然段差がないんですが、これってどうして・・・?

開 :このシールの上には、クリアのコート塗装を施してあるんですが、何度も研磨を掛けてその上からさらに塗装を施していくんです。
一見、大したことないように聞こえますが、シールを貼って2~3時間乾燥させて、そこから塗装に移って2~3時間乾燥させて研磨を掛けて、そしてまた塗装して2~3時間乾燥させて研磨を掛けて・・・という繰り返しになるので、相当な時間を掛けて作業を行っているということです。

― :些細な事ですけど、他のメーカーでもこれはあまりみないですね。

開 :そうですね。
他メーカーさんではあまりやられていないかもしれないですね。

― :ファルシオンなんかは段差があるように思うんですが。

開 :あれは立体的なシールデザインですので、敢えて浮かび上がるようにしています。

― :なるほど。

がま磯 マスターモデル2口太/尾長 元竿リールシート接続部

開 :あと、ここも些細なことではあるんですが、塗装とリングの際のつなぎの塗装なんですが、ここを埋めていく作業も手作業で行っています。
これもやられているメーカーさんは少ないかと思います。
でも、塗装を行わず接着しっぱなしで製品としてあげてしまうとリングに水が入って腐食の原因になってしまったりと言ったこともありますし、何より美しくないんですよね。

がま磯 マスターモデル2口太/尾長 元竿リールシート尻栓接続部

特に元竿の部分については、それぞれのパーツにつながりができず、途切れてしまうとどこか無機質で『生き物』のようなぬくもりを感じられないんです。
弊社は、竿を『生き物』のように表現したいという想いがあって、途切れをつくらずにつなげることであったり、どれも本当に些細な事ではあるんですが、職人さんの手によるあたたかさと気配りを感じていただければ幸いです。

つまり、弊社の磯竿は細部まで手作業でつくられていて、工程もすごく複雑なんです。
なので、どうしても価格は高くなってしまいますし、言い訳になってしまって恐縮なのですが、生産数にも限りが出てしまう。

手間を省いてもう少しコストダウンすればいいじゃないかという声を頂くこともあるんですが、こんな些細なことでもこだわって愚直にやっていくというのがMADE IN JAPANのがまかつの竿としての魅力ですし、こだわりなんです。


今回発売されたのマスターモデル口太、尾長。
いずれもとんでもない実釣性能を持つロッドではありますが、それと同時に装飾や細部のつくり込みまでが美しいまさに工芸品と呼べる逸品となっております。
細部までつくりこまれた設計からくる美しさと、今まで体験したことのない実釣性能を、磯上で存分にご堪能ください。

文・写真:株)釣具のヤマト 大山 祐司

がま磯 マスターモデル2 口太
がま磯 マスターモデル2 尾長
がま磯 マスターモデル2 口太
がま磯 マスターモデル2 尾長
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